「木の文明」を考える(6)

第6回:法隆寺に学ぶ(つづき)

 ★第3の秘密: 耐震構造:
現代技術にも通ずる耐震技術が使われています。当時、地震対策の考えがあったわけではないので、偶然かも知れませんが、東京スカイツリーと同じ構造を持っています。
仏塔には、中心部に全体を貫く心柱があるのですが、法隆寺の五重塔の心柱は、土台の上に乗って立っているだけで、塔の構造の重さを支えてはいません。串団子のように、中心部を貫いているだけです。日本のほかの塔もほぼ同じで、中には、宙吊りになっているものさえあります。 この心柱が、地震の揺れを柔軟に逃がしてやる役目を果たしています。これは、柔構造と言って、変形しながら地震の揺れの力を逃がす技術で、日本の超高層ビルはすべて柔構造です。

 ★第4の秘密: 錆びない釘(くぎ):
1300年前の飛鳥時代の鉄釘は、現代の鉄釘よりはるかに長持ちするのです。現代の日本の鉄鋼業の技術は世界一ですが、1000年持つ釘を作ってはいません。日本の伝統的な製鉄技術が、現代の最先端の鉄に勝っている一面があるという事実です。
 もちろん、これは結果論ではありますが、偶然だけではなく、当時の人々が、どこの材料を使ってどのように作った鉄が優れているかを、経験的に知っていたということです。
 なぜ、日本の古い鉄。法隆寺に使われた釘がなぜ1300年も持っているのか、現代の分析技術で分かってきています。

<日本の古代鉄の秘密>
 1300年持っている古代の鉄の釘は、「たたら」という、日本独自の伝統的な製鉄方法によって作られています。日本で製鉄が行われるようになったのは、弥生時代後期、3世紀ころと言われています。そして、法隆寺が建立されるわずか300年足らずで、現代の鉄よりも優れた日本の伝統的な製鉄法「たたら」を確立したのです。
「たたら」によって作られた鉄は、和鉄とか和鋼とか呼ばれます。特徴は、現代の溶鉱炉で作られた鉄に比べて、不純物が極端に少ないことが挙げられます。また、原料に起因するチタンは多く含まれています。チタンは、脱酸素剤として脚光を浴びてきており、鉄の酸化を防止する役割も果たします。
 現代の溶鉱炉鉄は、コークスで還元するため、燃料に含まれる硫黄が入り、もろくなります。その対策として、マンガンやシリコンを添加しているため、これらが不純物として、さびやすい原因をつくっています。


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2014年01月04日 Posted byまこと(気象予報士)@地球環境 at 20:23 │Comments(0)環境問題解説

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