森林と生物資源(バイオマス)を考える(1)

 森林は、生物多様性の重要な役割を担うとともに、重要な資源としての役割もあります。
 森林だけでなく、いろいろな生物資源(バイオマス)が、自然エネルギー(再生可能エネルギー)として注目されてきています。
 森林と生物資源(バイオマス)について、何回かに分けて、解説します。
第1回:鉄(Fe)から迫る森林誕生の秘密とは・・・

まず、用語解説から
バイオマスとは: 
 生物資源の総称。森林をはじめ、あらゆる動植物から微生物に至るまで、すべての生物は有機物で構成されています。そして、これらは、生態系や生物多様性を構成しているだけでなく、資源というとらえ方でも見ていく必要があります。気候に恵まれ、自然を崇拝してきた日本は、バイオマスの宝庫です。

<森林の誕生の秘密(生命の生い立ちと鉄)>
 生態系は、炭素循環、窒素循環、水循環等、持続可能ないろいろな仕組みが働いています。
 実は、「鉄」も重要な役割を果たしています。
 地球の大気には、豊富な酸素(約18%)が含まれているため、私たちは生きていけるわけですが、当たり前だと思っていて、ありがたさを忘れていませんか。
 地球上に昔から酸素があったわけではありません。
 地球の誕生は46億年前ですが、光合成する生物が誕生する35億年前までは、地球上に酸素は存在しませんでした。鉄は、イオンとして、海中に溶けていました。
 35億年前に誕生した最初の光合成生物であるラン藻類によって生成された酸素は、海水中に溶けている鉄イオンを酸化させ、鉄の粒子となって、海底にたまりました。何億年もかけて海底に蓄積し、鉄鉱石となりました。
 このようにして、約15億年もかかって、海中の鉄イオンのほとんどがなくなりました。
 その後、酸素は空中に放出され、酸素分子にもう1つの酸素原子が結合してオゾンが作られ、太陽からの有害紫外線が遮断されるようになり、やっと、生命が海から地上へ移ることができました。海で生命が誕生してから、30億年以上もかかりました。
 海から最初に上陸した生物は、シダ植物で4億年前です。その後、進化して、種子で繁殖する樹木が生まれ、緑の地球が形成されたのです。

<鉄の秘密: 生命の必須元素としての鉄!!>
 人間の体内で、鉄は必須元素であり、重金属の中では一番多い。血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの中心的な元素です。
 人類だけでなく、ほかの生物にとっても、鉄は必須元素です。
 では、生物は、どのように鉄を摂取しているのでしょうか。
 多くの微量必須元素は、水に溶けてイオンとなっているため、生物が容易に取り入れることができます。ところが、鉄の場合、粒子状になっているため、そのままでは吸収できません。そこで、陸上の植物、森林では、腐植土を利用しています。腐植土の中の有機酸が鉄と結合し、イオンと同様の働きする物質になります。(コロイドとよばれます。)これによって、植物が吸収できるだけでなく、河川から海へ流れて、海の沿岸の生物(生態系)を豊かにしているのです。

 腐葉土を蓄えた豊かな森林は、海の生態系も豊かにする役割をはたしています。


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2013年01月27日 Posted byまこと(気象予報士)@地球環境 at 10:47 │Comments(0)環境問題解説

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