海の環境問題を考える(7)

第7回:深海底に眠る資源とエネルギー

<深海底に眠る資源とエネルギー>
 国土面積の狭い日本は、資源の少ない国といわれてきました。
 経済水域や世界一の深海の存在が、これをひっくり返してしまうかもしれません。

★メタンハイドレート
 水圧によって、天然ガスが水の分子と結合して、シャーベット状になったものです。高い水圧と低い温度が必要で、水深1000m程度の深海が条件を満たしています。(浅いと水圧が足りない。深すぎると、温度が高く、気体になってしまう。) 
 日本列島周辺にかなり多くの分布域が確認されており、資源量は100年分と言われています。
 ※)資源量=使える量 ではありません。回収可能な比率を掛けたものが実際に使える量で、「埋蔵量」といいます。
  埋蔵量=資源量×回収率

 すでに、メタンハイドレートの掘削・回収の実験は成功しており、量産的な技術開発がすすめられています。

★熱水鉱床
 海底火山の周辺では、しみ込んだ海水が、熱せられて海底に噴出する海水の循環が発生しています。
 その際に、地下のマグマの成分も溶け込んで運ばれてきて、海水で急冷されて固体となって、噴出孔の周りに煙突状に積もっていきます。「チムニー」と呼ばれています。陸上で言えば、温泉のようなものです。
 ここには、レアメタル、金、銀、銅、亜鉛、鉛等の有用な金属類が濃縮されて存在します。
 沖縄周辺では調査が進んでいて、海底に見える「チムニー」以外でも、広範囲にわたって、海底の下に鉱床が眠っていることが明らかになってきています。

★コバルトリッチクラスト
 海の中にも多くの山があり、「海山」と呼ばれます。過去の海底火山活動で作られたもので、プレートの移動によって、海底に列を作って存在することが多く、日本列島周辺にも、海山の列がたくさん存在します。
 海山の表面を、固くなった皮にようにおおっているものをクラストと呼び、通常は、厚さ20~30センチくらいと言われています。 クラストには、白金、コバルト、モリブデン、マンガン等、貴金属やレアアースが、高濃度になっています。
 一般的には、マンガンの含有が多いので、「マンガンクラスト」と呼んでいますが、中には、コバルトが1%以上も含まれているものがあり、「コバルトリッチクラスト」と呼びます。
 不思議なことに、「マンガンクラスト」も「コバルトリッチクラスト」も、西太平洋に集中しており、期待されています。

★レアアース泥
 太平洋の海底の泥の中に、たくさん含まれていることが、最近分かってきました。今まで、中国に依存していて、尖閣の問題で、中国が輸出を止めて大問題になったのは、先端産業に欠かせない高性能磁石や蛍光物質の重要な材料だからです。
 レア(まれ)と名付けられていますが、実は世界中にたくさんある物質です。効率よく採集できるかどうかという問題につきます。
携帯電話等の電化製品の廃棄物の中に、十分な量があり、「都市鉱山」と言われています。取り出すための費用が合わないのが実態ですが、技術開発も進められています。
海底のレアアース泥も同じです。採集技術の開発が鍵となります。


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2014年01月04日 Posted byまこと(気象予報士)@地球環境 at 16:16 │Comments(0)環境問題解説

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